こういう「零」も

ある火曜日の晩、西中島のバール・イルソーレで、「定例会」やっていると、カウンターで、Dr.Yとボクの並びにいた女性と会話がクロス、彼女いわく
「私、新明和に勤めていたのですよ。新明和って会社ご存知?」
存じているもなにも、太平洋戦争が終わるまでは、川西航空機いうて、傑作機「二式大艇」「紫電改」を世に出し、さらに戦後は、これまた傑作飛行艇といえるPS-1、US-1を海上自衛隊に納入。最近になって発展改良型のUS-2も運用開始されたし、この機種はどうやらインドあたりに輸出されることにもなりそう。あと、日本のほとんどの空港のボーディングブリッジは新明和の製品、世界中の空を飛んでる旅客機のお手洗いの七割から八割は新明和製。ダンプカーの荷台なんかも作ってるよね。理髪店の椅子や洗髪台なんかも作ってるし.....と諳んじると、
「まあ、私も知らないことまでよくご存知」
と目を丸くされる。
このくらいは、ミリヲタ、乗り物ヲタとしては基礎知識なんだが、その基礎の一端を形作った一冊の本のことを、このとき思い出していた。

その本とは、城山三郎著「零からの栄光」。
百田尚樹氏の小説「永遠の零」がまずベストセラーとなり、宮崎駿氏による最後の長編アニメが公開され、さらに「永遠の零」が映画化され公開......一昨年くらいから今まで、「零」という言葉をよく耳にするようになっているが、その「零」はこの本では、チョイ役ですらない。
まず、ネタばらしをしておく。航空機の黎明期に、兵庫の地方財閥から起こった川西航空機が、苦労を重ねた上にやがて帝国海軍に認められ、二式大艇(にしきだいてい = 二式大型飛行艇)、紫電改といった、戦後接収した米軍を驚嘆させた傑作機を世に送りだすような絶頂を迎えたものの、敗戦によって、どん底のゼロにまで陥る。戦後、日本の航空機産業の禁止、企業的な経営の危機や困難などの苦労を経て、ふたたび傑作飛行艇PS−1を世に出す栄光の夢を成し遂げるというプロットである。

二式大艇
二式大艇(二式大型飛行艇) - Wikipediaより -

冒頭の女性は、実は、派遣として新明和では働いていたそうなのだが、
「新明和の社員の方々は、ほんとにいい人ばっかり、社内の雰囲気もいい。会社の人柄がよいという感じ。機会があるなら、また新明和で働きたい」
と、新明和のよさをやたらアピールしてきた。そういえば、中学生の時に読んだあの本、色々と面白い登場人物たちがいたような。今、改めて読むと、また違うものや、このオネーさんのいう「会社の人柄」の良さが見えてくるかも知れないと思い、改めて読んでみた。

川西航空機時代から、日立よりの経営陣が送り込まれてくるまでの新明和(※1)は、正直ヲタク集団である。ボク個人としては、室町期に、日本の産業化、都市化がなってから、ヲタク文化というものが始まったと考えているのだが、その水上機が海軍に認められ、さらに、二式大艇や、紫電、紫電改を製作するあたりの川西航空機の社内文化は、ヲタク文化極まれリといった感がある。ケチるところはケチるが、夢の実現のために必要なものなら金は惜しまないという創業者川西龍三社長(作中では竜三と表記)のもと、集まった技術ヲタク、ものづくりヲタクたちが、誰も成し遂げていない技術革新と、それの実用化という夢に没頭邁進している感がある。
紫電改
紫電改 - Wikipediaより -

戦後しばらく後、新国産飛行艇開発の技術的目処がたったとき、日立から送られた重役より、夢を追うだけではなく、収益もあげなくては航空機事業から撤退すると告げられるが、ヲタクらしいひたむきさで、とうとう自衛隊に制式採用という、収益の目処までたててしまう。
新明和という企業の人柄のよさは、おそらく、ヲタクらしいひたむきさ、ヲタクらしい気遣いと優しさによってつくられているのであろう。
二式大艇、紫電改、PS−1の設計主任、菊原静男氏(※2)が言ったそうな「いい会社で、いい仕事をさせてもらった」と。
これから、就職をする就活生、学生の皆さん、新明和のような会社を目指すべし。

US-2
US-2 - Wikipediaより -


※1 現在、新明和は日立グループをはなれている。以前、日立グループ傘下にあったときは、「この木なんの木」のCMのキャプションに、新明和の名もあった。
※2 零戦の設計主任、堀越二郎氏とならび「天才」と呼ばれる人物でもある。

 

テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

2014-05-07 : 書籍 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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